さて、ブログの更新がまたしても久々になりました。
先日、楽天ブログで知り合った長年の友人と長時間おしゃべりをし、再びブログを書こうと思い立ちました。
明日はメルマガ発行日の1日(月2回、1日と15日発行です)ですので、それに合わせてメルマガから抜粋してみました。
メルマガのタイトルは「触察&ボディワークメール講座」で、書いている側としては、一貫して「ソーマ=soma」について触れているつもりですが、脳科学であったり、建築や音についてだったりと多岐にわたります。
今回は、今年最初に小川隆之氏が書いたメルマガをご紹介いたします。
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触察&ボディワークメール講座
【堀口恭司の「カーフキック」を解剖学的に解説!】
―RIZIN「朝倉海vs堀口恭司」の一戦から―

本日は、小川隆之が担当しました。
最後までお読みいただければ幸いです。
【解剖学の前に知るもの】
本年第1弾のメルマガですが、話題はボディワークではなく格闘技です。
大晦日、テレビで観たRIZINの試合、なかでもメインイベントの「朝倉海vs堀口恭司」の一戦が強く印象に残りました。
堀口選手がこの試合で多用した技なのですが、「カーフキック」というのを初めて知りました。
ネットで検索してみると、今、格闘技界で流行しているそうです。
「カーフ」は「ふくらはぎ」の意味なので、カーフキックはふくらはぎを狙う蹴り技です。
私は空手の経験者ですが、私が習った空手の流派では、ふくらはぎを狙うのは、「足払い」といって、相手の足を払って転倒させるときくらいでした。
カーフキックはもともと、総合格闘技界で流行りはじめたようです。
大腿部を狙うローキックよりも遠距離から出せるので、タックルされにくいというのが理由だそうです。
堀口選手のカーフキックで朝倉選手がよろけるのを見て、最初は「え、転ばせ作戦?」と思ってしまいました。
ところが、堀口選手のカーフキックがくり返されるうちに、朝倉選手は戦闘不能となってしまいます。
そして、勝利は堀口選手の手に。
試合が終わって、「転ばせるのが目的でなく、効かせるための技なんだ」とわかって、どう効いたのかと興味がわいてきました。
というわけで、本年第1弾のメルマガだというのに、話題がボディワークではなく、格闘技になってしまいました。
申し訳ありません。
ただ私は、格闘技に関しては、経験が少しあるだけの素人ですので、攻防とか試合運びとかはそれほど
わかりません。
ですから、カーフキックの「効き具合」に限って書きたいと思います。
それも、「戦術的にどう」とかでなく、やはりオープンパスのメルマガですので、解剖学的観点にしぼって書いてみます。
格闘技が嫌いでも、わからなくても、大丈夫な内容にできればと思っています。
【下腿の解剖学 】
カーフキックが下腿のどこにヒットし、どう効くのかを知るためには、下腿の解剖学がわかっている必要があるでしょう。
そこで、膝下から足首までの骨組みと筋肉の付き方を調べましょう。
骨は2本あります。
どちらも長い骨ですが、「脛骨」(すねの骨)という体重を支える太い骨が内側にあり、「腓骨」という細い骨が外側にあります。
細い骨のほうは、体重を支えることには関わっていません。
ただし、「腓骨神経」という神経(総腓骨神経→深・浅腓骨神経)が、腓骨頭(腓骨の最上部)のあたりでは、表層近くを走行しています。
2本の骨を「骨間膜」という膜状の組織がつないでいて、これら2本の骨と骨間膜に筋肉が付いています。
筋肉は4つのコンパートメントに分かれています。
前にあるコンパートメントを「前部コンパートメント」、
外側にあるのを「外側部コンパートメント」
と言います。
そして後ろ側は、浅い部分と深い部分に分割されていて、それぞれ
「後部浅層コンパートメント」
「後部深層コンパートメント」
と言います。
前部コンパートメントは、前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋が、
外側部コンパートメントには、長腓骨筋、短腓骨筋が、
後部浅層コンパートメントには、腓腹筋、ヒラメ筋が、
後部深層コンパートメントには、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋が入っています。
以下の図を参照してください。

【カーフキックの軌道 】
堀口選手のカーフキックは素早く強烈で、タイミングもよく、4発のヒット(私が見逃していなければ)で朝倉選手を戦闘不能にしました。
下腿の骨組み、そこに付いている筋肉を前記しましたが、それらのどこにカーフキックがヒットするかを予測するためには、その軌道を知ることが必要でしょう。
堀口選手と朝倉選手は、どちらもオーソドックスで(左足を前にして)構えます。
堀口選手は右足で、朝倉選手の左下腿を狙います。
そうなると、堀口選手のカーフキックは、反時計回りの軌道で朝倉選手の下腿の外側にヒットするでしょう。
朝倉選手の左足(前にある足)は、少し内側に向いていますので、予想としては、堀口選手のキックは、
朝倉選手の腓骨と、外側部コンパートメントの筋肉か、後部浅・深層コンパートメントの筋肉にヒットする
でしょう。
ですから、打撃を受けるのは、骨でいうと腓骨、筋肉でいうと長・短腓骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋、長母趾屈筋、後脛骨筋でしょうか。
(加えて、腓骨神経にも留意しておいたほうがよさそうです)
【実際には、どこに被弾した? 】
さて、実際にはどこに「被弾」したでしょうか。
4発のカーフキックがヒットしたのですが、1発ずつ確認したいと思います。
興味があれば、実際の映像がYouTubeにアップされていますので、観てみてください。
【1発目】
1発目は、堀口選手の足首あたり(たぶん、距舟関節あたり)が、朝倉選手の腓骨頭あたりにヒットして
います。
被弾したのは、腓骨と長腓骨筋でしょうか。
また、総腓骨神経にも影響があったかもしれません。
ただしヒットした際、朝倉選手の体重が左足に乗っていなかったので、朝倉選手の左下腿は内側にはじかれ、朝倉選手はバランスを崩します。
それによって、キックによる打撃力はだいぶ緩和されます。
【2発目】
2発目のキックは、少し深めに入ります。堀口選手は、脛骨下部でキックしています。
映像を観ると、脛骨による打撃は、下腿に吸収されるというより、下腿そのものを強く移動させる力と
なっているように見えます。
大腿へのローキックであれば、もしかすると大腿そのものにダメージを与えたかもしれないと思いました。
ヒットした部位は、1発目と近い部位で、朝倉選手の腓骨頭の高さです。
この部位を狙っていたとすると、総腓骨神経あたりをターゲットにしていた可能性もあります。
朝倉選手の体重は1発目のときよりも左足に乗っていましたが、堀口選手のキックが脛で押し込むような蹴りになってしまい、それが幸いして、朝倉選手の左足は再び内側へはじかれ、打撃力は下腿に吸収されませんでした。
被弾したのは、やはり腓骨と長腓骨筋だと思います。
【3発目】
3発目のキックは、腓骨の低い位置(たぶん、半分より下あたり)にヒットしています。
朝倉選手の体重が左足に乗った瞬間にうまい具合にヒットしているのですが、ヒットした位置が低かったためでしょうか、朝倉選手は足をすくわれるように膝をつきました。
それにより、ある程度は、キックの打撃力を殺すことができたようです。
ただし、3発目の後から、朝倉選手の左足の移動距離が少なくなっているように見えます。
また、左脚にかかる荷重が内側に寄ってきているように見えます。
3発目の被弾は、腓骨と長・短腓骨筋でしょう。
腓骨筋群がダメージを受けたのかもしれません。
ちなみに3発目では、堀口選手は、右足の内果から舟状骨あたりを使ってヒットしています。
【4発目】
4発目のキックが放たれたとき、堀口選手は朝倉選手の正面に位置しています。
それで、堀口選手のキックは、朝倉選手の脛骨粗面から頸骨外側顆あたりにヒットしています。
これまでの3発は腓骨付近ですが、この4発目は脛骨上部にヒットしています。
しかも左足に体重が乗った瞬間に、その体重を支える脛骨にヒットしています。
被弾した部位も、脛骨の高い位置で、膝直下の前面に近い外側面ですので、足が内側にはじかれて足底が浮くこともなく、朝倉選手の左脚は打撃をしっかりと受け止めてしまします。
また、床反力も加わり、かなり強烈な打撃となったはずです。
被弾位置を詳しく見ると、脛骨粗面、脛骨外側顆の他に、ガーディ結節(腸脛靭帯の付着部)にもヒットしているようです。
ですから、腸脛靭帯や大腿筋膜を通して大腿部にも影響が及んでいるかもしれません。
筋肉でいうと、前脛骨筋や長趾伸筋などにもダメージがあると思います。
ちなみに、堀口選手の舟状骨内側部、舟状骨粗面の少し上の硬いあたりがヒットしているように見えます。
なおかつ、これまでの3発よりも足首のスナップが効いた、素早いキックになっています。
【おわりに 】
格闘技ファンであれば、堀口恭司だけでなく、朝倉未来、朝倉海、那須川天心といったビッグネームが出場したので、このRIZINのイベントを観られたかもしれません。
そして、今回のメルマガを読まれて、こんな見方もできるのだなと思ってくださったかもしれません。
しかし、格闘技に興味をお持ちでない方々には、あまり面白くなく、イメージしにくい内容だったかもしれず、申し訳ありませんでした。
次回は、皆様にもっと興味をもっていただける内容にいたしますので、これに懲りず配信をお待ちくだされば幸いです。
https://www.youtube.com/watch?v=osxRYKeoWTo&t=283s朝倉海VS堀口恭司 対戦
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長文を読むのは苦手という方もいらっしゃるかと思いますが、さらっと読み流した後で対戦動画をみていただくと良いかもしれません。
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