アイダ・ロルフの生涯についての記述はそう多くは無く、ほとんどが「ロルフィングの創始者」としてのアイダ・ロルフに関するものだった。
だが、ロルファー向けに発行される季刊誌「Structural Integration」に、アイダ・ロルフの息子が母親としての彼女に人生について語っている。
彼女の父親は、ニューヨーク東部で波止場などを建設するエンジニアだったこと、母親はニューヨーカーで、6人兄弟の末娘で、その二人の間に、一人っ子としてアイダ・ロルフは生まれた。
ニューヨークで生まれ育ち、バーナードカレッジで生化学の博士号を取得した彼女は、25歳で家族同士の交流も深かった幼馴染のウォルターデンメールと結婚した。彼は、電気技師だった。
アイダ・ロルフは、結婚前の姓で博士号を取っていたので、夫の姓を名乗らなかった。
またこの時期は、アイダ・ロルフにとってロックフェラーインスティテュートでの調査員としてのキャリアが始まったばかりだった。
ロックフェラーインスティテュートは、薬物関連の調査では群を抜いていた。
このころアイダ・ロルフと夫はグリニッチビレッジに住んでいたが、ロングアイランドに移り、そこで長男のリチャードが誕生した。1933年だった。
後に、リチャードはロルファーとなる。
次男のアランによると、アイダ・ロルフは幅広い視野で、各分野について学んでいたという。
解剖学、生理学、心理学、哲学、宗教、ヨガ、一般意味論、ポメオパシー、占星術の視点からも学んでいたという。
そして睡眠時間はとても少なく、常に専門書など(小説を読んでいるのはみたこともない)堅い本を読んでいた記憶があると語っている。
アイダ・ロルフは次男に、父と母のカナディアンロッキーへのハネムーン旅行(それはキャンプ旅行だった)の最中に、父親が馬から落ちたことがあったと話した。
彼女は程なくして、足の捻挫や、どうやってそれを治癒させていくかについて思いをめぐらせ始めたという。
おそらくこの出来事が、人間に対するアイダ・ロルフの興味を掻き立てた出来事だっただろうと彼は振り返る。
アイダ・ロルフはロックフェラーインスティテュートを退職し、2人の兄弟が生まれてからしばらくは家庭で過ごした。
東ニューヨークから50マイル離れたストーニーブルックという土地に移り住んでいた。
ここでアイダ・ロルフは、盲目のオステオパス、ドクターモリソンと故意になった※。
彼はポートジェファーソンという町に住み、そこで生計を立てていた。
何年かに渡って、週に1度だけ、何時間か、アイダ・ロルフはサイエンティフィックジャーナルを彼と共に読み、議論を交わした。
ドクダーモリソンは1980年代に生まれたと思われる、初期に活躍したオステオパスだった。
この時期、アイダ・ロルフは40代後半になっていた。
ストラクチュアル・インテグレーションを発展させるべく、彼女の焦点はさらに鋭いものとなっていた。
兄弟は学校に通うようになり、母としてのアイダ・ロルフは研究者として興味の対象を追う機会が増していた。
1947年、父(アイダ・ロルフの夫)が心臓病で亡くなった。53歳だった。母(アイダ・ロルフ)は50歳だった。
長男は14歳、次男である私は13歳だった。
大した財産も残らず、家族を支えるたくわえもわずかだった。アイダ・ロルフはクライアントを増やし、ストラクチュアル・インテグレーションを発展させていった。
それと同時に、ティーンエイジャーの親としても立派に役割をこなしていた。
息子として、特に心に残っている教えが二つある。
ひとつは「言うべきことがないなら何も言うな」を文字って「ほめ言葉が見つからないなら何も言うな」であり、もうひとつは、彼女自身が達成した事柄についてだ。
成し遂げたことが何であれ「それは10パーセントの直感と、90パーセントの汗(努力)から成る」という言葉であった。
本当に、彼女は不休で疲れ知らずの仕事人であり、興味に突き動かされて人間の身体を理解するということに全てを注いでいた。
夫が亡くなって約10年後、アイダ・ロルフは持っていた二つのアパートを売り、ニューヨークの74番街にあるアパートの14階に移った。とても眺めの良い部屋だった。
だがその後ニュージャージーへと引越し、兄夫婦と同居を始める。
このころのアイダ・ロルフは精力的にヨーロッパやカリフォルニアへと旅をし、ストラクチュアル・インテグレーションの原理やテクニックを教えたり、それに更なる磨きをかけていたりした。
アイダ・ロルフは1979年に82歳で亡くなった。直前まで仕事をしていた。彼女はニューヨークのブロンクスにある、ウッドラウンセメタリーに眠っている。

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ロルファー向け機関誌からの抜粋で、『こがボディワークだ』執筆の資料として訳した文章です。
USBの中で眠らせているのがもったいないので、ブログで紹介してみました。
※Rolfing and Physical realityとは異なる内容になっているようです
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