2022年04月16日

あなたとは(宮沢賢治の詩より)?

オープンパスは、スピリチュアリティを否定していません。
むしろ密かに、スピリチュアルな世界の探求を続けてきました。
しかしながら、スピリチュアルなことをボディワークセッションに取り入れようとは思いません。
そのお話はまた別の機会にしたいと思いますが、巷で言われる「スピリチュアル」には大きく分けて2種ある気がしています。

1.現世利益中心、引き寄せ、金銭、出会いなどに特化したもの。ビジネス成功者が提唱するもの
2. 利他的で、自然との調和を重視するもの。古くからの伝統的な精神世界を探求するもの

オープンパスが目指すのは2. の世界で、その世界を「非物質的な世界」と捉えています。
スピリチュアルな世界とは少し違うニュアンスの、古今東西の賢者が求めてやまなかった世界を指し示します。

こうした世界について同じような考えを持ちたいと考える方への語りかけの意味もあり、先日4月15日のメルマガを発行しました。
メルマガのタイトルは【共有のできなさこそスピリチュアル】で、第六感があると自己申告する方に対する疑問を呈すると同時に、私たちひとりひとりが住む固有の世界について、書いてみたつもりです。

「固有の世界」とは、わたしたちひとりひとりは同じ経験をしつつもその全体(ストーリー)は異なり、細部に至っては人それぞれに生きてきた背景すら影響する「個別の経験」を意味します。

そこで質問です。
宮沢賢治の「作品一〇〇四番」という詩ですが、ここで語られる「あなた」とは?

「作品一〇〇四番」
今日は一日あかるくにぎやかな雪降りです

ひるすぎてから

わたくしのうちのまはりを

巨きな重いあしおとが

幾度ともなく行きすぎました

わたくしはそのたびごとに

もう一年も返事を書かない

あなたがたづねて来たのだと

じぶんでじぶんに教えへたのです

そしてまつたく

それはあなたのまたわれわれの足音でした

なぜならそれは

いつぱい積んだ梢の雪が

地面の雪に落ちるのでしたから


宮沢賢治

さて、あなたは「あなた」の存在について、イメージが湧きましたか?
きっと、それがあなたのこれまで世界であり、当たり前に存在する(べきだ)と疑わない世界なのだと思います。


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posted by MSaito at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ボディワーク

2022年04月12日

触察&ボディワークメール講座【自閉症の言語世界とボディワーク】より

久しぶりの投稿となります。
長らく文章を書いていないと、語彙力が失われていくことに危惧を感じます。
今回は、4月1日に配信したメルマガを紹介させていただきます。
ボディワーク関連のさまざまな事柄について、その時々での発見を題材にして書いています。
お読みいただき、面白そうだなと思われましたら、メルマガ登録をお願いいたします。
https://peraichi.com/landing_pages/view/ner2k
****************
触察&ボディワークメール講座
【自閉症の言語世界とボディワーク】〜ボディワークの限界と可能性〜

クライアントさんが読んでも面白く、ボディワークに興味がある方にとって有益なメルマガにしようと日々、健闘の最中です。

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【言語とボディワーク】
ボディワークはなぜゆえボディワークなのか。
筋膜リリースとどう、異なるのか。
このメルマガは「狭義のボディワーク」について情報発信することを目的としていますので、今回は、ボディワークの要のひとつである「言語」について最近考えたことを、発信してみたいと思います。


【ブックフェアで出会った本】
チチカカコフェアは有名出版社6社共同で行われるブックフェアです。
筑摩書房「ちくま学芸文庫」、中央公論新社「中公文庫」、KADOKAWA「角川ソフィア文庫」、河出書房新社「河出文庫」、講談社「講談社学術文庫」、平凡社「平凡社ライブラリー」の各レーベルの編集長が強く推薦する書籍を集めたブックフェアです。
教養を高めるための四部門
「思想:じぶんで考える」
「社会:みんなで生きる」
「歴史:過去と対話する」
「自然:万物の理(ことわり)を知る」
が書店の一角のコーナーで展示販売されます。
ご存じの方もいらっしゃると思います。

今年はその第七回目でした。
常に仕事のことばかり考えていて、つい仕事に関する書籍ばかりを購入してしまいます。
ああ、こうして「本当に自分の好きなもの」が分からなくなっていくのだろうと嘆かわしい気持ちが頭をよぎりましたが、仕事に関連しつつもおもしろいと思える本は、書店に立ち寄る度に見つけます。
チチカカコフェアで購入したのは2冊。
そのうちの一冊が
『自閉症はつがる弁を話さない』松本敏治著 角川文庫(初版令和2年9月)
少し後で読み始めた本が(大抵は2冊、同時進行で読書します)
『「わたし」をめぐる冒険』浜田寿美夫 洋泉社 
『「わたし…」』は小川隆之氏の蔵書です。
2005年初版の『自閉症はつがる弁を話さない』に、松本氏と意見を同じくする文章が、偶然にもはっきりと書かれていました。

「わたしの知っているかぎり方言を使う自閉症のこどもはいません」

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【自閉症の世界と言語】
浜田氏は京都大学大学院を経て奈良女子大学で教鞭をとる発達心理学、法心理学、供述分析の専門家です。
『私をめぐる冒険』は、章ごとにその専門分野に関連する知識であふれ、実例も多く挙げられており、読んでいて楽しく、読了後は心地よい知識の重みが残ります。

さて、一部を著書から抜粋しつつ、自閉症について読み進めます。

赤ちゃんは言葉を発する前から声で親を呼ぶことができる。話し言葉は相手に対する働きかけや訴えに端を欲するもので、本来自分と相手の身体につき沿うかたちで登場するとし「しかし、自閉症の子はそこが苦手」であり「彼らには肉体を持った他者がいない、あるいは希薄なのです」と述べています。
例)相手に「本があるよね」と語りかけるべき場面で「本がある、本がある」と終助詞を繰り返す(方言の話を少しすると、方言はこの語尾・終助詞に特徴がある。〜だぎゃ、〜だっちゃ、〜だべなど。終助詞がうまくつかえない自閉症者は方言も苦手である)

浜田はまた「場面に貼りつくことば」と表現する終助詞の反復についても述べており、自閉症者は終助詞「〜したいですか?」「〜したい?」が理解しがたいために記憶に残る場面の言葉を繰り返す傾向にあると解説しています。
例えば、自分からミルクが欲しくなった時に、ミルクをくださいという代わりにミルクをもらったときに聞いた言葉「ミルク欲しいですか?」や「ミルク、欲しい?」を繰り返してしまう傾向にあります。
帰宅したら自ら「おかえり」というのも同じ理由からです。
浜田の優しく客観的な立場は「自閉症が自分と相手の立場を混同しているというのなら、その前に私たちが視点の交換を無意識に行っていることの不思議さに着目したほうが良いと思います」と締めくくっています。

【ボディワークに限界はあるか】
自閉症関連のこの二冊を読み進めながら、はたと考えました。
主客を行きつ戻りつしながら、自らの経験をつぶさに観察するボディワークは果たして万人むけなのだろうか?
ことばのコミュニケーションに重きを置くのであれば、どのような対話が必要となるのであろうか?
自らの身体に対する独自の世界観(私という概念と私という空間/範囲)をもつ人たちはそもそも私たちと異なる快・不快の世界観をもつのではないだろうか?

このメルマガでは、あくまでボディワークに関連する事柄に範囲を限定し、方言については触れず、自閉症の方々のコミュニケーションの方法と、そうした方々とのセッションの可能性について考えてみました。

******************
4月1日は世界自閉症デーでした。
知り合いの自閉症の方は驚異的な記憶力の良さで、その方が関わる全員のスケジュールを(聞いただけで)覚えています。職員Aさんの出勤日はいついつ、Bさんはいついつで、Cさんは週何日、Aさんは週合計△時間お仕事をします、Bさんは△時間ですが〇月〇日はお休みです、など。
あの記憶力が私にもあれば、と羨ましい気持ちでいっぱいになりました。


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posted by MSaito at 21:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ボディワーク

2019年07月10日

機能している身体を知る=ボディワーク

先日、(一社)オープンパスメソッド協会 代表理事の小川隆之氏が なかなか良いブログを書いていたので、それについて補足のブログを書こうと思います

知覚.jpg小川隆之のブログ

オープンパスが前面に出している技術には、昨今では @触察セミナー A筋膜リリース コツのコツ Bボディワーク入門がありますが、正直なところ、伝えたいのは『ボディワーク』そのものです。

『ボディワーク』は、身体学の範囲にありつつ、認知心理学をベースとした考え方です。
ものすごく簡易に表すと 脳の可塑性/身体運動/自己認識/記憶 がテーマです
(まだ複雑ですか??)

もっと平たく言うと、自分として認識している”からだ”について、突き詰めて考えていくという試みでもあります。
AI機能が発達するにしたがい、自己と見做される範囲が拡大され始めました。
AI機器を使う事で自己がどこまでリーチしていけるのか(iphoneというデバイスを使って実際に世界の裏側にいる人々と交流ができることが当たり前となり、その先の可能性も、今の私たちの想像を超えるだろうと思われます)、現時点での常識や、想像の範囲を超える可能性に驚いているのです。
自己を延長したその先にあり、バーチャルでありつつも”自己”として存在する「個」についても、身体学は掘り下げる必要があると思います。

これこそが、オープンパスが扱うボディワーク=身体学ですので、従来のイメージでとらえられてきた手技療法で得られる安堵感、スピリチュアルレッスンで得られる自己肯定感、リラクゼーションで得られる心地よさ、内観法で得られる自己認識的なボディワークとは、まったく異なる理論(メタ理論)の礎として、思想と技術、技法を展開していることをご理解いただけるかと思います。

身体学は、自己とは何かを突き詰めます
深淵にたどり着くための方法、手法として、心理学、心理療法、認知科学、解剖学、生理学、医学、神秘学、倫理、ジェンダー論などなど、などなど、数えきれない試みがなされてきました。
その中でもボディワークは「機能している自己について、身体を通じて理解を深める」ことを追求することで、「ヒトとはなにか」を突き詰める学問として永遠に問いを発し続けているのです。

長ったらしくなりましたが、そうした事柄が凝縮された技法を「ボディワーク」と呼びます。
手技療法ではありません。リラクゼーションでもありません。
ましてや心理療法でもありません。

それを本気で主張しつづけなければ、ボディワークは衰退の道をたどると思います。
商売をしていく上でキャッチーだとか、言葉の響きの良さや、目新しさが好ましいとか、そうした金銭や知名度を意識した方たちが、ボディワークとは異なる技法をボディーワークと表現していることは承知しています。
片手間にボディワークを、などという働きもあるようですが、ボディワークは技術職です。
認定を得たのちすぐにお金をいただけるような、単純でマニュアル的は施術でないことは、オープンパスメソッドレジスタードマークボディワーカーの方ならばご存知だと思います。
数をこなすことでやっと施術のスタート時点となることについて、多くの技術者の方の賛同を得ることができきています。

くどくどとお話してしまいました、こんなことについてじっくりと話し合える日を設けなくてはいけないなと切実に感じる今日この頃です。


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