今回は、2023年6月15日に発行したオープンパスのメルマガからの抜粋をアップしました。
ボディワーク≠筋膜リリースであることを事あるごとにお伝えしていましたが、具体的なことは、あまり強調できていなかった気がします。
説明の一環としてこのメルマガを書きました。
運動学習に興味をお持ちの方にもご一読いただけますと嬉しいです。
タイトルは【運動学習の新たな発見】です
【学習とはお勉強ではない】
被殻出血から早7か月が経ち、退院時には認知症を患っていたかのようだった小川さん@baucafeがセッションを再開しました。
2023/6/12のツイートでは画像のようにつぶやいています。

意識せずになにかができるようになることを「学習」といいます。
学習というとお勉強を思い出してしまいますが、本来は「習得したことが記憶された」状態を指します。
お茶碗を落とさずにご飯を完食できる。
シャツのボタンを留められるようになる。
すでに記憶の彼方となっていますが、日常生活のこうした当たり前の動作ですら、子供の頃は困難だったはずです。
失敗したり、違うやり方を試したりと試行錯誤のなかで身体がやりかたを学習し、そうしようと意識をしなくても遂行できるようになっていきます。
【運動学習の成り立ち】
オープンパスのソマティカルワーカー養成トレーニングでお伝えしたように、学習の行程において、大脳皮質に新たな神経回路ができて、神経回路が太くなり(成熟して)記憶の回路となります。
学習したことが脳に保持され記憶となる仕組みについては、実は最近まで解明されていませんでした。
2022年には、玉川大学の研究により「運動学習の前後では脳の働く部位が異なる」こと、また同じく2022年東北大学の研究により「シナプスを食べる細胞により記憶が定着する」ことが発表されました。
【第一次運動野とニューロン】
からだが刺激を受けたときの信号を伝える神経細胞(ニューロン)末端にある、木の根っこみたいなかたちをしたシナプスがたくさん、第一次運動野にできることが分かっています。
第一次運動野は、運動を行う際の「計画を練る脳の部分」です。

ここを損傷すると、反体側の身体の麻痺が起きるのですが、小川さんの場合は被殻出血だったので完全麻痺の難からは逃れられました。
【運動学習で脳の働く部位が違う】
玉川大学脳科学研究所はマウスを使った実験で
「動物が学習する過程で大脳皮質に出現するシナプスには、“学習”に重要なシナプス、その“記憶”を保持するシナプスが別のものであり、別々に機能する」
ことを見つけました。
マウスが動きを学習する段階で、上手に動作ができるようになると、第一次運動野にあるニューロンの軸索に「スパイン」と呼ばれる突起ができ、そこに新しいシナプスが出現します。
この「学習」の段階では、高次機能野から第一次運動野へ情報伝達すること、つまり第一次運動野と視床※との連携を助ける「高次機能野」がすごく頑張って働いている状態です。
高次機能野は運動の計画や準備など、運動の実行に関わる意識的な情報処理を行なっている部位です。
そのため、高次機能野にあるシナプスの結合も増えます。
ところが、ひとたび学習が行われ記憶する段階になると、高次機能野の助けがなくても運動は行われます。
学習初期に新たに形成されたシナプス結合の多くは、学習が終わった時点では消失していることが確認されました。
逆に、視床からの情報を受けているシナプスは学習後期にも残存していることが新たに分かりました。
※視床は自動化された運動信号を中継すると考えられる領野で、学習した事柄を、意識しなくても自動的に行うことに関与しています。記憶には、視床が大きく貢献していることがわかります。
【記憶のために"食べる"細胞】
東北大学生命科学研究所は、脳内で神経細胞同士がつながる部位「シナプス」を他の細胞が食べることで、記憶の定着が進むことを明らかにしました。
シナプスを含む神経細胞の一部を、小脳バーグマングリア細胞が断片的に食べることで、不要な情報伝達を弱め、記憶の定着を促進することを示しました。
脳内の細胞は神経細胞とグリア細胞なので、一方の細胞をもう一方が食べる(貪食)するという衝撃的な内容です。
神経細胞に栄養供給をするだけの地味な存在だったグリア細胞が(←あくまでわたしが思ったグリア細胞のイメージ)情報処理を担っている細胞であることがわかりました。
また、運動によりグリア細胞の貪食が促進されることもわかりました。
マウスにふり幅の大きい眼球運動をさせると、小脳でのグリア細胞の貪食が多くなりシナプスにできるトゲが小さくなりましたが、貪食を減らす薬剤を投与するとトゲは小さくなり学習も抑制されました。
【記憶を定着させるには?】
それなら記憶をよくするにはどうしたらよいのか?
すぐに何か摂取をしたくなる人や他力本願な人はご注意を。
まずは運動が大切です。
「中程度の強度の運動をすること」
長時間ウォーキングすることを運動と勘違いしている方がいます。
ウォーキングは運動ではありません。
そもそもヒトは動くようにプログラミングされているので、歩くことは日常的な動作です。運動だと思っていた方は認識を改めてくださいね。
食事は「ケトン食」が良いとされていました。
糖質を制限し、良質のたんぱく質を増やすこと。
それにより、以前のメルマガでお話したBDNFも増加します・
補助的に摂取するビタミンとサプリはパーキンソン病の予防としても推奨されています。
ービタミンー
ビタミンD
ーサプリまたはハーブー
・アセチルLカルニチン
・ナリンギン
・プエラリン(葛)
・エキナセア (エキナコシド)
・イボガイン
・アシュワガンダ(ウィザフェリンA)
・クルクミン
・レスベラトロール
・デビルズクロー/Harpagoside
・イチョウ葉/Bilobalide
・ガストロジン
・朝鮮人参
・地黄
ボディワークをボディワークと理解したうえで、少し広い範囲で利用していただくことは可能です。
ですが、ボディワークの根幹は本来「運動学習=ソマティクス」です。
ボディワークに興味をお持ちの方なら、今回の運動学習に関するコンテンツも「なるほど」とお読みいただけたのではないでしょうか。
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