2023年08月03日

運動学習の新たな発見(メルマガより)

今回は、2023年6月15日に発行したオープンパスのメルマガからの抜粋をアップしました。
ボディワーク≠筋膜リリースであることを事あるごとにお伝えしていましたが、具体的なことは、あまり強調できていなかった気がします。
説明の一環としてこのメルマガを書きました。
運動学習に興味をお持ちの方にもご一読いただけますと嬉しいです。

タイトルは【運動学習の新たな発見】です

【学習とはお勉強ではない】
被殻出血から早7か月が経ち、退院時には認知症を患っていたかのようだった小川さん@baucafeがセッションを再開しました。
2023/6/12のツイートでは画像のようにつぶやいています。

baucafe.jpg

意識せずになにかができるようになることを「学習」といいます。
学習というとお勉強を思い出してしまいますが、本来は「習得したことが記憶された」状態を指します。

お茶碗を落とさずにご飯を完食できる。
シャツのボタンを留められるようになる。

すでに記憶の彼方となっていますが、日常生活のこうした当たり前の動作ですら、子供の頃は困難だったはずです。
失敗したり、違うやり方を試したりと試行錯誤のなかで身体がやりかたを学習し、そうしようと意識をしなくても遂行できるようになっていきます。

【運動学習の成り立ち】
オープンパスのソマティカルワーカー養成トレーニングでお伝えしたように、学習の行程において、大脳皮質に新たな神経回路ができて、神経回路が太くなり(成熟して)記憶の回路となります。

学習したことが脳に保持され記憶となる仕組みについては、実は最近まで解明されていませんでした。

2022年には、玉川大学の研究により「運動学習の前後では脳の働く部位が異なる」こと、また同じく2022年東北大学の研究により「シナプスを食べる細胞により記憶が定着する」ことが発表されました。

【第一次運動野とニューロン】
からだが刺激を受けたときの信号を伝える神経細胞(ニューロン)末端にある、木の根っこみたいなかたちをしたシナプスがたくさん、第一次運動野にできることが分かっています。
第一次運動野は、運動を行う際の「計画を練る脳の部分」です。

body_cell_shinkei.jpg

ここを損傷すると、反体側の身体の麻痺が起きるのですが、小川さんの場合は被殻出血だったので完全麻痺の難からは逃れられました。

【運動学習で脳の働く部位が違う】
玉川大学脳科学研究所はマウスを使った実験で
「動物が学習する過程で大脳皮質に出現するシナプスには、“学習”に重要なシナプス、その“記憶”を保持するシナプスが別のものであり、別々に機能する」
ことを見つけました。

マウスが動きを学習する段階で、上手に動作ができるようになると、第一次運動野にあるニューロンの軸索に「スパイン」と呼ばれる突起ができ、そこに新しいシナプスが出現します。

この「学習」の段階では、高次機能野から第一次運動野へ情報伝達すること、つまり第一次運動野と視床との連携を助ける「高次機能野」がすごく頑張って働いている状態です。

高次機能野は運動の計画や準備など、運動の実行に関わる意識的な情報処理を行なっている部位です。
そのため、高次機能野にあるシナプスの結合も増えます。

ところが、ひとたび学習が行われ記憶する段階になると、高次機能野の助けがなくても運動は行われます。
学習初期に新たに形成されたシナプス結合の多くは、学習が終わった時点では消失していることが確認されました。

逆に、視床からの情報を受けているシナプスは学習後期にも残存していることが新たに分かりました。
視床は自動化された運動信号を中継すると考えられる領野で、学習した事柄を、意識しなくても自動的に行うことに関与しています。記憶には、視床が大きく貢献していることがわかります。

【記憶のために"食べる"細胞】
東北大学生命科学研究所は、脳内で神経細胞同士がつながる部位「シナプス」を他の細胞が食べることで、記憶の定着が進むことを明らかにしました。

シナプスを含む神経細胞の一部を、小脳バーグマングリア細胞が断片的に食べることで、不要な情報伝達を弱め、記憶の定着を促進することを示しました。
脳内の細胞は神経細胞とグリア細胞なので、一方の細胞をもう一方が食べる(貪食)するという衝撃的な内容です。

神経細胞に栄養供給をするだけの地味な存在だったグリア細胞が(←あくまでわたしが思ったグリア細胞のイメージ)情報処理を担っている細胞であることがわかりました。

また、運動によりグリア細胞の貪食が促進されることもわかりました。
マウスにふり幅の大きい眼球運動をさせると、小脳でのグリア細胞の貪食が多くなりシナプスにできるトゲが小さくなりましたが、貪食を減らす薬剤を投与するとトゲは小さくなり学習も抑制されました。

【記憶を定着させるには?】
それなら記憶をよくするにはどうしたらよいのか?
すぐに何か摂取をしたくなる人や他力本願な人はご注意を。

まずは運動が大切です。
「中程度の強度の運動をすること」
長時間ウォーキングすることを運動と勘違いしている方がいます。
ウォーキングは運動ではありません。
そもそもヒトは動くようにプログラミングされているので、歩くことは日常的な動作です。運動だと思っていた方は認識を改めてくださいね。

食事は「ケトン食」が良いとされていました。
糖質を制限し、良質のたんぱく質を増やすこと。
それにより、以前のメルマガでお話したBDNFも増加します・

補助的に摂取するビタミンとサプリはパーキンソン病の予防としても推奨されています。
ービタミンー
ビタミンD

ーサプリまたはハーブー
・アセチルLカルニチン
・ナリンギン
・プエラリン(葛)
・エキナセア (エキナコシド)
・イボガイン
・アシュワガンダ(ウィザフェリンA)
・クルクミン
・レスベラトロール
・デビルズクロー/Harpagoside
・イチョウ葉/Bilobalide
・ガストロジン
・朝鮮人参
・地黄


ボディワークをボディワークと理解したうえで、少し広い範囲で利用していただくことは可能です。
ですが、ボディワークの根幹は本来「運動学習=ソマティクス」です。
ボディワークに興味をお持ちの方なら、今回の運動学習に関するコンテンツも「なるほど」とお読みいただけたのではないでしょうか。


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2023年05月08日

アクティブイマジネーションをボディワークに活かす

ボディワークセッションにおいて。
リリース感については、間違うことなく感覚することができます。
100%に近い感じでリリースが起きているか、起きていないかはわかります。


その「リリースを得る感覚」が何かに近いと思うことがありました。
それに気が付いたのは、数年前です。
何かに近いというよりは、いつも行っていることの応用をしているように思ったのです。
そこで、それは何であるのかを探ってみました…

親しくしてくださっている方々やメルマガをご購読くださっている方々はご存じと思いますが、わたしは日常的に瞑想をしています。

何も考えずに呼吸に意識を向ける瞑想と、アクティブイマジネーションと呼ばれる心理学のユング派が好んで行った方法の、2つの方法で試みています。


※アクティブイマジネーションという瞑想法は、時に幽体離脱の方法としても利用されるようです。これに関してはまた別にお話する機会があればと思いますが、何しろこういう話題が苦手は人もいらっしゃるのと、ボディワークとは近いようで遠いような話題なので。話題には事欠かないし、お話もしたくてウズウズするのですが…。


さて、アクティブイマジネーションについて。

アクティブイマジネーションは心理学者であるカール・ユングが開発した瞑想法です。
方法としては、瞑想に近い状態で、イメージが湧きおこるのを待ちますが。
湧きおこるイメージは無意識からのメッセージであり、それらを通じて自らを理解し心の癒しや成長を狙うことが本来のアクティブイマジネーションの使い方なのですが、ボディワークのセッションでいつも使っている方法にとても近い事に気が付きました。

アクティブイマジネーションはこのように進みます。
(1)イマジネーションの出発点を決める
(2)自分自身をその出発点に配置する
(3)周囲の環境や状況を観察する
(4)観察を続け、何かが起こるのを待つ
(5)何かが起きたその変化にどう応じるかを考え、行動に移す
(6)変化の次の反応をみる

ボディワークのセッションは、アクティブイマジネーションと同様に「何かを起こす」のではなく「何かが起きるのを待つ」ことが最重要です。


・対象とする器官が筋膜であったとしても、手技のツールを出発点(リリースする部位)に配置し、広範囲にクライアントの身体を観察し、クライアントとワーカーが置かれている環境を含めてセッションの場と考える。
・そしてリリースを起こすのではなく、リリースを待つ。ただただ、待つ。
・リリースが起きたらその変化を先へ、先へと進めていく。
・最終的には立位で(つまり重力の中で)変化を確認してもらう。

まさに、アクティブイマジネーションの行程そのものなのですが、全く違う部分が一点あります。
そして、これこそが、心理療法とボディワークを絶対に交わらないものとする点です。
それは「身体的な変化を心理的なイメージと結びつけない」こと。


他で受けた身体心理療法の、身体と心理を結び付けた解釈を信じ、それを伝えてくださるクライアントさんもいらっしゃいます。
膝が痛いのはカリスマ性との関連であるとか、
筋膜に過去のトラウマが埋まっていて、それは前世の怪我から来ているとか
怒りによって腰痛が起こっているとか。
女性性を解放していないために左側に支障が出ているとか。

ですが、心理的な解釈に納得できても身体は変わっていかない現状が残っていると。

ボディワークセッションにおいでくださる方は純粋な意味での身体的変化を望んでいて、身体心理的な解釈以外の解決法が必要でおいでくださっています。

「日頃はメタ理論の話をしているクセに、心理療法で使うテクニックをボディワークに取り入れて」と批判されてしまいそうですが、身体も心理も、変容のプロセスは同じであると思います。
作る料理は違えども、料理の基礎である包丁を研ぐまでは同じ、そんなイメージで解釈していただければと思います。


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posted by MSaito at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ボディワーク

2022年05月11日

ボディワークと脳科学で「望みを引き寄せ」る

5月5日にブログを更新してから少し間が空いてしまいました。
今回は、過去のメルマガのご紹介となります。
少し加筆をしましたが、ほぼ原文のままです。
メルマガは一回限り、読み切りの配信なので、加筆修正したいと思いつつ手付かずです。
「読んでます」とおっしゃっていただけるのが嬉しく、毎月1日と15日はがんばって配信しています。
ちなみにオープンパスのメルマガは2019年5月にスタートし、驚くことに3年間継続できています

以下は2020年9月5日発行のメルマガです
過去のメルマガ(一部)はnoteに掲載しています(一部有料)ので、興味をお持ちいただけましたらご一読ください。https://note.com/openpath

【2020年から起こる新時代】
占星術は全く詳しくありませんが、雑誌の星占いや占いサイトを見ると「2020年は大激動の年」とあり、どの占いも一様に、「今年を境い目に価値観が大きく変わる」としています。

これまでは「地の時代」で、伝統的なものや、古い体制に重きが置かれていた時代でしたが、これからの「風の時代」はそうした旧体制が解体され、個人が尊重される時代になるのだそうです。

【引き寄せの法則】
スピリチュアルなことに興味がある、という方はいらっしゃいますか?
そうした方々にとって「引き寄せの法則」は特に目新しくないと思います。

「特に自分にとって大切な望みを選び、強く成功したときのことをイメージすることで、その夢が叶うという法則」を引き寄せの法則と呼ぶそうです。

願うことを鮮明にイメージすることで願望を実現できる不思議な方法だそうです。
マユツバじゃない?という方も中にはいらっしゃるでしょう。
宇宙の法則なんて言葉を聞くと、それだけで拒否反応が起こる方もいるでしょう。

わたし(斎藤)は中立派です。
過剰に宇宙に期待しないし、すべてを科学で説明できるとも思いませんが、今回はがんばって科学的に説明してみますので、最後まで読んでみてください。

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【RASって聞いたことがありますか?】
パソコンの専門用語ではありません。
RAS(Reticular Activating System:ラス)=網様体賦活系(もうようたいふかつけい)という、脳の機能のことです。

脳幹は、間脳、中脳、橋、延髄に区分され、脳幹網様体は、脳幹に網目状に分布しています。
主な働きとして
@筋の緊張や運動調節
A大脳にインパルスを送り、覚醒状態を保つ
この2つがあります。

この働きをRASと呼びます。
※すぴ系の書籍などはこの説明がざっくりすぎて正確さに書けるものがあります

この働きを広域に考えてみたとき、「自分にとって必要だと思う情報を取捨選択して取り入れる機能」だと考えることができます。

例えば、今までスペインに関心がなかったのに、スペイン人の友人ができた途端に、これまで気が付かなかったスペインとのつながりが見え始めたり、スペインに関する情報が集まるように感じたり、という経験はありませんか?(スペインを適当な言葉に替えてください)

カクテルパーティー効果もRASの為せる技です。
雑音が多い雑多な状況でも、誰かが自分の名前を呼ぶとその声がはっきりと自分に届くという現象です。

RASの機能は「必要な情報」に関することを率先して選択する脳の働きなので、これを利用すれば、効率よく「欲しいものを引き寄せる」ことができる。
それが脳科学的に見た「引き寄せ」の法則です。

【ボディワーク的観点から引き寄せやすい身体】
もう少し、脳科学的な説明を加えて引き寄せやすい環境づくりを考察してみましょう。

脳幹網様体賦活系の作用は、
モノアミン
ヒスタミン
オレキシン
アセチルコリン
などの神経伝達物質に左右されます。

ここで話題にしたいのは、覚醒を促す「上行性覚醒系」という脳の機序です。
とは言え、詳しくなりすぎると混乱してしまうので簡単に。

まずは覚醒とはどういう状態でしょうか?
◎目が覚めている状態
◎筋緊張が適度に起きている状態
◎何かに意識を向けられる状態

それでは、具体的にどうやって、引き寄せ=脳幹網様体の上行性覚醒系の環境を整えたらいいでしょう。
思うだけで願いが引き寄せられるなら、実践してみたいですよね。

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実践のための簡単な方法があります。
3つ、ご紹介しましょう。

【1・ぼーっとする時間を作る】
知人に、とにかくぼーっとする時間を持つと自慢していた人がいましたが、それではダメです(笑)
問題意識を持たずにぼーっとするのでは時間がもったいないだけです。

目的をしっかりと持ってから、空白の時間を作るのが、正しいRASの活性法です。

こんな実験があります。
70名に、モニターに写る単語を記憶してもらいました。
日常用語が各一秒間、表示されます。
その後で、グループを2つに分けました。
1.何もせずぼーっとする
2.イラストの間違い探しをする
15分間、過ごした後で、先ほどの単語を思い出してもらいました。

なんと、ぼーっとしちrたグループは70%もの単語を思い出しましたが、作業をしたグループは55%以下でした。
1週間後の調査でも、ぼーっと過ごしたグループが高い確率で記憶を残していました。

RASの「何かに意識を向けられる状態」は、記憶にも関連しています。
記憶が長く留まったグループは、脳幹網様体賦活系の働きが良くなったと考えられるのです。

【2.目標を書き出す】
さきほどの記憶の研究にもありましたが、情報が整理されるためには、情報が明確化されている必要があります。
何か自分の目的なのかをはっきりさせるために、望みを「書き出して」ください。
それを読み返してください。
声に出したり、動きを付けたりすると尚良し、です。

【3.ボディワークを使う!あたまを起こす】
脳幹網様体賦活系の、筋緊張を促進する神経伝達物質を放出するためには、
筋緊張の促進系であるモノアミン作動系が刺激される必要があります。

そのために必要なことは…
抗重力姿勢をとること。

つまり、あたまを起こして、抗重力筋を活動させることが必須です。
重力に逆らい、直立姿勢をとるための筋肉を、がんばって働かせるのです。
目的を果たそうという目的で瞑想するならば、横になるのはNGですね。
覚醒したままでぼーっとするためには最低でも座位で、脊柱起立筋を働かせてRASを働かせなくてはいけないのです!!

そうしてみると、ヨガの屍のポーズなどは究極のリラックス法ではあるけれど、引き寄せには適していないの「かも」しれません。

ボディワークでRASを活用させる方法は抗重力筋を使う以外にもいくつかあります。
また、抗重力筋を使う方法もさまざまです。

いかがでしたでしょうか?
皆様の日常が少しでも豊かになるような情報発信を、これからもしていきたいと思います。

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ご希望のセッションと、ご希望日を第三希望までお知らせください。
申し込みフォーム http://www.rolfingopenpath.com/contact-w79gg
斎藤瑞穂公式サイト http://www.rolfingopenpath.com/
※日曜日は講座のためセッションはお休み、月曜日は定休日です。
2022年度、ロルフィングのセッションは承っておりません。
解剖学に詳しく単発で受けられるオープンパスメソッドへのお申し込みをお待ちしております。
posted by MSaito at 00:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ボディワーク
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