
実は紀伊國屋書店でこの本を購入して数日後に、他の荷物と共に駅のトイレに置き忘れるという失態をおかし二度目の購入。
副題が「西洋近代知の暗部をめぐる旅」であり、西洋近代が見ることを避けてきた異貌のオブジェに見る側の真理を探そうという「つまりは、当のオブジェをめぐって『見えないものを見えるようにする技術』としての猟奇」(序文より)について書かれている。
奇形の胎児に始まり、腐敗屍体像、成人の遺体、髑髏、内臓と、猟奇博物館にはおびただしい数の血なまぐさい湿った(カラカラに乾いた)オブジェが陳列されている。
しかしながら、本書は好事家のみがひそやかに楽しむ趣向の書籍では決してない。
目次の中から興味を引かれたものをいくつか挙げてみたい。
-視覚の迷宮から人魚まで 展覧会「むかしむかし、見世物小屋があったとさ」
-解剖学ヴィーナス スピッツネル博士の大解剖学博物館
-眠れるヴィーナス 画家ポール・デルヴォーのトラウマ
-日本の腐敗屍体像(トランジ) 小野小町の九相図
-二つの不思議な人体標本 ライモンド・ディ・サングロの「悪魔との契約」
-知られざるパンソンの伝記 フリーメイソンとパレ=ロワイヤルの臓物婦人坐像
-「恐るべき子供」から大作家へ ギュスターブ・ブロベール
秘密、いかがわしさ、陰惨さが潜む猟奇的なオブジェの画像がふんだんに使われ、読み手の思考をわしづかみにして離さない(確定申告が終わるまではなかなか読み進められないのは、それを恐れてのことだ)。
西洋思想の入門書という位置づけにしても良いのではないかと思うくらいに、知の時代背景やエピソードなどが細やかに綴られている。
オブジェにまつわる歴史的エピソードを読み進めるうちに、日の当たる場所で賞賛されてきた西洋近代の「知」についての理解が深まるしかけになっている。
解剖がお好きな方には一読することを強くお勧めしたい。人体の標本の類が多数、掲載されている。
本書が単なるグロテスクの紹介本ではないのは当然のことで、著者の加賀野井秀一先生はフランス哲学者である。
文中には思想家の残したキーワードがそっと隠されているので、思想に明るい方はそれを探すのも楽しいのではないか。
必読の一冊である。
すぐに手に入れて読んできていますが
(現在はラカンをじっくりと)
これは〜ちょっと〜ためらいました(笑)
子供の頃、見世物小屋に入るのを
ものすごく怖がっていた自分を
思い出しました
でも、読むかもです(笑)
紹介した書籍を読んでくださっているとは!
ありがとうございます<(_ _)><(_ _)>
紹介している書籍はすべて、自分が面白いと思った、興味を持った書籍です。
ラカンについては、入門書のような軟らかい書籍を読んでもピンとこなくて、『ラカンの精神分析』でやっと腑に落ちる感覚がありました。
黄金比、大文字のA、他者の欲望などは特に面白くて部分的に再読したりしています。
『猟奇博物館』も面白いですよ!
画像は決してグロテクスではなく、どちらかというと耽美派の芸術といった趣です。
お時間があったら、ぜひ手に取ってみてくださいね!