2016年12月13日

意識しなくても感じる神経回路

ぽっかり時間が空いたのでブログを更新することにしました。
1月からソマティカルワーカー養成トレーニングがスタートします。
今回も新しい情報を仕入れるべく資料を読み込んでいます。
そうした中で、知覚に関する興味深い論文を読みました。

これまでの仮説は「皮膚感覚の知覚のためには、外因性ボトムアップと内因性トップダウンが脳の領域で連合することで皮膚感覚は起こる」でした(このブログでは仮説1とします)。
この仮説に基づくと、私たちは注意を向けなければ知覚ができないことになります。
脳科学総合研究センター行動神経生理学研究チームの村上正宜と鈴木崇之は、ラットを使ってこの仮説を検証し、これ以外にも脳の回路が存在することを実験で証明しました。

実験の結果、外的刺激は第一次体性感覚野に送られその領域が活性化され、次に第二運動野が活性化する。その後再び後肢からの情報が第一次体性感覚野に送られるということがわかりました。
これは、皮膚感覚が外因性ボトムアップ入力として第一次体性感覚野から高次脳領域である第二運動野に送られたのち、再び第一次体性感覚野に「外因性のトップダウン入力」としてフィードバックされることを示す、と村上・池田は仮説を立てています(このブログでは新仮説とします)。

kenkyu.jpg

次いで、ラットへの膜電位イメージング法を用い、大脳新皮質の神経活動を観察しました。
この観察から、従来提唱されている(仮説1)内因性トップダウンと外因性ボトムアップ入力の連合入力が与えるのと同等の作用を、第二運動野の5層、遅発性神経活動に対して外因性トップダウン入力が単独で担っていることを確認しました。
これは皮膚感覚の知覚における新しい神経回路モデルだそうです!

上記の結果を踏まえ、村上・鈴木は最終実験として光刺激を使ったラットを用いてテクスチャーの違う床を走らせる実験を行いました。
光刺激を与えることで外因性トップダウン入力を抑制すると結果に有意差がでました。光刺激をしないマウス(外因性トップダウン入力がされたラット)は80パーセントの正解率で迷路を走り、対して光刺激で外因性トップダウンが抑制されたラットは65パーセントの正解率を出しました。

一連の実験から、村上と鈴木は「正常な皮膚感覚の知覚には、第一次体性感覚野への外因性ボトムアップだけでなく、その後の第二運動分野から第一次体性感覚野への外因性トップダウン入力が必要」であることを裏付けました。
また、新たに発見した神経回路は従来の回路とは異なり、注意をしなくても知覚できる回路として利用されている可能性と脳が二つの異なる回路を使い分けている可能性も示唆しています。
この実験結果は脳障害により失認の研究にも応用できるのではないかと考えられています。

各実験の詳細は割愛して、まとめてみました。
研究者って、つくづくすごい人たちです。
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