2014年09月24日

痛みについて

国際疼痛学会(IASP)が定義した痛みは「不快な感覚性・情動性の体験であり、それには組織損傷を伴うものと、そのような損傷があるように表現されるものがある」とされています。

痛みは自己を守る防衛反応として先天的に備わっています。
原始的なしくみなため可塑性を持ち、高度なしくみの原型となります。

脳における可塑性がそうであるように、痛みの可塑性も記憶として蓄積されます。
痛みの伝達に歪みが出来上がると通常は関連性を持たない触覚や交感神経との間に混乱が起き、触覚が痛覚に変容してしまうことがあります。
こうした痛みはポリモーダル研究の第一人者である熊澤孝朗により「慢性疼痛症」と命名されました。

怪我や手術の後で傷痕は治癒したのにも関わらず、その部位に疼痛が続く場合があります。
急性痛(損傷部分をかばえというサイン)の必要がなくなったあとも、神経の可塑的変化によって痛みが起きる現象が慢性疼痛症です。

痛みを受け取る受容器は2種類あり、外的刺激が脳の感覚野に送られ引き起こされるのが一次痛です。「いつ」「どこに」痛みが起きたかを識別できるのが特徴です。二次痛は識別が困難な痛みで「ポリモーダル受容器」と呼ばれる感覚器によって感知されます。
筋肉や関節、内臓からも見いだされ、全身に分布している感覚器です。

ポリモーダル受容器は機械的刺激、化学的刺激、熱による刺激に反応します。
そのため、サーモスタットのような働きをし、身体の恒常性を助けます。
これは身体の状態を一定に保つのに役立ちますが、痛みが無い場合でもこの恒常性を保とうとする働きが、逆に働きます。
負の可塑的変容が起こり、痛みを感じているのと同様のサインが脳に送られます。
炎症が無くても強い痛みが継続すると「慢性疼痛症」に移行するリスクがあるようです。

痛みは情動に左右されると感じる患者も多いようですが、それは痛みの信号が大脳皮質にある情動をつかさどる部分に影響を及ぼすからだそうです。

参考文献 : 『痛みを知る』熊澤孝朗 (東方出版)

個人的にはポリモーダル受容器と体性感覚の関連に興味があります。
今回は慢性疼痛症とその作用機序について理解できたことを書き出してみましたが、ボディワーク的に見て、とても興味深く示唆に富んだ一冊でした。
引き続き、セッションに関連している部分を読み深めていきたいと思います。

red.jpg



この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/103912353
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
QRコード